革と皮のちがい

鞣しの工程を経て皮から革へ

動物から剥がした「皮」はそのままにしておくと腐敗し、乾燥させると固くなってしまいます。そこで、「皮」の状態から「鞣し(なめし)」工程を経ることで「革」になるのです。

鞣し(なめし)とは。

種類によって皮の風合いや性質が変わります。

「鞣し(なめし)」とは、皮のコラーゲン繊維に鞣し材を科学的に融合させ、防腐性や柔軟性をもたせ、安定した素材にすることをいいます。
古代には動物の脂や、植物の汁をつけたり煙で燻すなどが行われていました。
使用する鞣し材の種類によって、皮の風合いや性質が違ってきます。
 

タンニンなめし

古くから行われている植物由来のタンニンによるなめしの方法です。タンニンという渋成分に含まれるポリフェノールは皮のコラーゲンタンパク質と結合させる働きがあります。タンニンなめし後、染色・表面加工を行っていない革のことを一般的に「渋革」や「ヌメ革」と言いコシ・ハリがあり、タンニンの淡い褐色をしています。使用することで少しづつ飴色に変わっていきます。
なめし剤の薄い槽から濃い槽に長時間かけて移動し付け込んでいくため最短でも、30日以上かかってしまいます。
 

クロムなめし

無機質のクロムなどの金属を主とした、薬品による「なめし」の方法です。
しなやかで、耐熱性、染色性に優れているため、衣料や袋物など様々な用途に使われています。クロムなめし後は、全体に「ウェット・ブルー」と呼ばれる青白色をしているため、染料を入れて着色し使用されます。
なめし時間が短いため、現在ではクロムなめしの割合の方が多くなっています。
 

混合なめし

タンニンなめしとクロムなめしの特性や長所を生かしたなめしの方法です。
通常、クロムなめしの後にタンニンなめしの順で行われるのがコンビなめしといい、タンニンなめしの後にクロムなめしの順で行われるのが、逆コンビなめしと呼ばれます。

染色のちがい

革によって染め方も変わってきます。

染料染め

染料染めは革に染料をしみこませて染めるため、革そのものの風合いを残したまま着色出来ますが、ムラになりやすく色落ちしやすい傾向があります。
また、落ち着いた色に染まりますので、パステルカラーなど明るい色には染まりません。

 

顔料仕上げ

顔料仕上げは革の表面に顔料を吹き付けてコーティングするため、
ムラなく均一にコーティングすることができ色落ちの心配が少ないく、パステルカラーに染めるのに適しています。
しかし、革本来の風合いを隠してしまうという面もあります。

 

革の特徴

革によって個性があります

色艶の変化

 
ヌメ革のような淡茶色の革作品は使用していくことで、日に当たり使う人の手によって、ゆっくりと艶のある深い琥珀色に変わっていきます。
ダイヤモンドパイソン(ヘビ革)も同様に、使うことでゆっくりと艶のある落ち着いた色に変わてきます。
その変化も使う人次第でいろんな表情に変わってきます。まさに一点物です。

どうぞ、使いながら色の変化を楽しんでください。ヌメ革以外の革でも、日々変化する艶を楽しんでください。

 
 
シワ
トラ
血すじ
 
 

シワ・トラ・血すじ

革は牛の性別や、性格によってキズの数やキズのつく場所も違ってきます。
また、よく動かす部分にはシワがあります。首のまわりやお腹の大きなシワやたるみが、虎の縞模様に似ているため、トラと呼ばれたりします。
皮膚の下に走っていた血管の跡が残っていたりします。
それが天然素材だという証でもあります。
よほど見栄えが悪くないかぎり、革の表情として作品に取り入れます。
お客様によって価値観はそれぞれですが、一頭だけの個性と受け取ってお楽しみください。
 

高い耐久性

革は布等よりも摩擦に強く、裂けてしまうこともありません。
耐久性に優れているため大切にしていただければ長く使っていただけます。

 
 
メンテナンスのこと

革は使うことが一番のお手入れですが、突然のトラブル時のケアをご紹介いたします。

汚れのふき取り

柔らかい布を使います。表面に傷がつかないように注意しながら、全体のほこりや汚れをふき取ります。糸目に詰まっているほこりなどは、毛の柔らかいブラシで取り除くといいでしょう。
 

オイルを塗りこむ

市販のオイルやクリーム(ニーフットオイルやミンクオイル等)を柔らかい布や化粧コットンに少量つけます。全体に薄く均等に伸ばすように塗りこみます。オイルの付け過ぎは、シミや型崩れの原因になりますので注意してください。目立たない所から塗り始めるのがいいでしょう。
オイルを塗った後は、日陰に1時間ほど置きオイルが浸透するまで待ちましょう。
 

乾拭き

オイルが浸透したら、新しい柔らかい布で余分なオイルを拭き取るように全体を乾拭きしてください。キズを付けないように気を付けて拭いてください。
 

トラブル対策

突然のトラブルの対処法をまとめました

濡らしてしまったら

ヌメ革などは特に水分を吸収しやすいため、水濡れには十分注意してください。水に濡れると型崩れしやすくカビが繁殖しやすくなります。濡らしてしまったら乾いたきれいな布で、抑えるように水分を吸い取ってください。濡れているとキズが付きやすいため、決して強くこすったりしないでください。
ケースやカバンなどは新聞紙などを中に詰めて形を整え、風通しの良いところで陰干ししてください。天日干しや、ドライヤーなどの急速な高温乾燥は、型崩れやひび割れの原因になりますので行わないでください。
陰干しした後、革用オイルを薄く塗り、乾いたら柔らかい布で余分なオイルを拭き取って下さい。

カビが生えてしまったら

カビが繁殖してしまった場合、カビの根が革の繊維の中に入り込んでしまうと除去するのが難しくなります。表面のカビをかたく絞った布で、キズを付けないように丁寧に拭き取り、天日干しして殺菌してください。
長時間干すと、革が乾燥してひび割れの原因になってしまうこともあるので注意してください。市販のオイルやクリームを塗りお手入れしてください。
専門業者へ依頼するのが最も安心・安全な方法です。

乾燥してしまったら

革は生き物です。常に適切な水分を吸収したり放出したりしています。冬場や環境により水分が失われ乾燥すると、表面がざらついたり、ひび割れたりしてしまいます。
革用オイルを薄く塗り、乾いたら柔らかい布で余分なオイルを拭き取ってください。十分に栄養を与えつつ、革を柔らかくしてあげれば、ひび割れが今よりは目立たなくなります。